【帰納】と【演繹】こそが、人間がコンピュータに勝てる分野
昨日書いたプログラミングのステップ1段階目
[1](僕らが日常使う)人間の言葉を、数学の言葉(ロジック)に変換する
ですが、本当はこの前に
モデル化
という作業があります。
『コンピュータが仕事を奪う』(新井紀子)を読んで思ったことを書き留めます。
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【モデル化】とは、
森羅万象の中から、「重要な要素」を見つけ出し
その重要な要素の間の「関係」をつけること
と言えると思います。
言葉にすると難しいですが、僕らは日常の中で【モデル化】を行っています。
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たとえば、会議の前に
「適当な枚数コピーとっておいて」
といわれた場合の対応について。
「適当な枚数」をどのように判断すればよいのか、と考えたときに
その日の気温とか、上司のネクタイの色とか、今日食べた朝食などに
注目する人はまずいないでしょう。
普通は”会議の出席人数”に着目するはずです。
つまり、
”会議の出席人数”と”コピーの部数”が「重要な要素」であり、
その間には「関係」(コピーの部数=会議の出席人数+予備という関係)
があると【モデル化】しているわけです。
このように僕らは無意識のうちに【モデル化】を行っています。
科学も、基本的にはこの【モデル化】を行う学問です。
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ところが先ほどのモデルでは、コンピュータで計算するには不十分です。
※コピーの例の「予備」では、コンピュータには分からないため。
そこで、数学の言葉(数式)で表現されたモデルを
【数理(すうり)モデル】と呼びます。
(昨日書いたモデルは、数理モデルの例です)
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まとめると
【(概念としての)モデル化】
a-1. 考えたい事象(できごと)に対して「重要な要素」を見つけ出す
a-2. 「重要な要素」の間の「関係」をつける
a-3. その「関係」がたしかに正しいかどうかを実験して検証する
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【数理モデル化】
b-1. 「重要な要素」についてのデータを取る
b-2. 「重要な要素」間の関係を「式で表現」する
b-3. できた「式」に値を入れて、計算(シミュレーション)して検証する
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このうち計算(シミュレーション)の部分は、コンピュータが得意です。
コンピュータは、暗算世界チャンピオンの何億倍も速く計算できます。
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しかし、「重要な要素」がどれであるかを見つけるのは苦手です。
全部のデータをとれば分かるのではないかと思う人もあるでしょうが
”全部のデータ”(今日の気温から、朝食に食べたものまで)を取るというのは
現実的に不可能です。
ですから、ここは人間の能力が生きる部分でしょう。
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また「重要な要素」の「関係」をつけることも少し苦手です。
もちろん大量のデータから、データ間の「相関」を計算することはできます。
しかし「因果関係」を計算することはコンピュータにはできません。
ここはコンピュータの補助を借りつつ、人間が考えるべきところになるでしょう。
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こう考えると、人間に必要なのは「早く計算をする能力」よりも
「重要な要素」を見つけ、その間の「関係」をつける能力であると言えそうです。
そのとき重要なのは【帰納】と【演繹】の能力と言えるのではないでしょうか。
簡潔にいえば
・森羅万象の中から「これが重要なんじゃないか」と当てるのが【帰納】であり
・それが正しいとしたらどうなるか、と検証用の仮説を立てる力が【演繹】です。
僕らが【モデル化】をするときには、この【帰納】と【演繹】のサイクルを
ものすごいペースで回しているのではないかと思います。
いわゆる「ひらめき」も、背景は【帰納的推論】があるのだろうと推察されます。
※実際「ひらめき」とは、表層意識ではロジックになっていない、
無意識でのロジックの帰結であると解明されているそうですし。
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まあ何が言いたかったかというと、これから必要になる能力は
暗算を早く間違えずにできたり、複雑な連立方程式を解いたりする能力ではなく、
【帰納】と【演繹】の能力なのではないかということでした。
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最後、駆け足でしたが以上。